両親が住んでいた古くなってきている実家。子世帯が引き継ぎたいけれど、どんなリフォームがあるのか?費用はどのくらいかかるのか?など不安に思っている方は多いのではないでしょうか。この記事では、実家を引き継いで暮らすためのリフォームや費用の相場、注意点、補助金や贈与税、成功事例を解説します。費用面を工夫すれば、快適な住居をプランニングできるはず。ぜひ参考にしてみてください。
古くなった実家を子世帯が引き継いで暮らすにはどんなリフォームが必要?費用の相場は?
親世帯が長い間暮らしてきた実家は、老朽化が進んでいます。そのため古い家は、断熱性が不十分であったり、耐震性が劣ったりと不安な部分もあるでしょう。子世帯が引き継ぐのであれば、設備や間取りについても生活に不便を感じるかもしれません。
そこでリフォームやリノベーションを考える方も多いと思います。ここからは、古くなった実家を子世帯が引き継いで暮らすために、どんなリフォームが必要なのか?補修するべきか?などリフォームの選び方を解説。リフォームの目安になる費用の相場についてもご紹介していきます。たくさんの選択肢のある中で、施工会社に見積もり依頼をしてどんなリフォームができれば安心かを考えてみてください。
断熱性を向上させるリフォームと費用
そもそも断熱対策とは、1980年にできた省エネ基準に沿っているものが多く、古い家では十分な対策がされていないことも。断熱性が低いと、冬は寒く、夏は暑いと過ごしにくくなります。
断熱性を向上させるリフォームは、空調を過度に使う必要がなく、電気代を抑え、ヒートショックの影響を受けにくいというメリットがあります。
資金面を考えながら、やっておきたい箇所を決めて部分的に、断熱リフォームをプランニングするのもよいでしょう。
断熱性を向上させるリフォームは、主に下記の施工方法があります。
窓の断熱リフォーム
窓の断熱リフォームは、単体ガラスを複層ガラスに変えるまたは、内窓をつけるというリフォーム方法があります。
複層ガラスは、2~3枚のガラスの間に空気の層ができるので、断熱や結露を防ぐ効果があります。リフォームするのなら、外壁を取り壊さずにできる、カバー工法が人気です。
内窓は、もともとある窓の内側にサッシをつけて施工するため、空気の層ができ、断熱性が上がるという仕組み。サッシの解体などは必要なく、新規の設置のみで工事をできるのがメリットです。
<窓の断熱リフォームの費用相場>
窓のリフォーム種類 | 腰高窓(1窓あたり) | 掃き出し窓(1窓あたり) |
複層ガラスリフォーム | 17万~28万円 | 34万~43万円 |
内窓ガラスリフォーム | 8.5万円~11万円 | 20万~25万円 |
複層ガラスリフォームは、カバー工法の費用です、窓のグレードや断熱性によって金額に幅があります。
内窓ガラスリフォームについても、装着するガラスのグレードによって、施工内容によって価格帯の幅があります。断熱性のグレードが高ければ、費用は上がりますが、その分効果が期待できるのは良い点。比較するなど調査をした上で、予算内に収まるように、検討しましょう。
床の断熱リフォーム
床材の下に断熱材を取り付けることで、床下からの冷気を遮断し、隙間風が入りにくくなります。
床下にもぐりこむスペースがあり工事ができる場合は、費用は20~30万円ほど。床下に入って工事ができないケースは、床材の解体撤去をし、改めて床組みをし、フローリングの張替えをする必要があります。
費用相場は、施工面積60㎡あたり、70~120万円ほどです。費用はかかりますが、きれいな仕上がりになります。
壁の断熱リフォーム
壁の断熱リフォームは、内装の壁を一度解体し、断熱材を取り付け、内装の壁を仕上げるという作業が必要です。壁の断熱リフォームにより、夏は暖気が室内に入り込みにくく、冬はあたたかい空気が屋内に逃げにくくなる効果が期待できます。結露の発生を防ぎ、防音もできるので、一石二鳥のリフォームといえます。
壁の断熱リフォーム工事は、断熱材の種類や工法にもよりますが、1㎡当たり3千円~3万円の費用が相場です。延べ床面積120㎡の住宅の場合、壁の解体撤去費、クロスの仕上げや塗装を含み、100~150万円ほどの費用をみておきましょう。
天井の断熱リフォーム
天井の断熱リフォームは、夏は外の熱気を家に入れないように、冬はあたたかい空気を外に逃さない効果が期待できます。
断熱材を天井裏に敷きしきつめる方法が一般的で、解体や仕上げ工事をする必要がありません。費用相場は、施工面積60㎡あたり、7~20万円ほどです。
耐震性を向上させるリフォームと費用
古い家を引き継ぐのには、耐震性を向上させるリフォームを検討する必要があります。老朽化した住まいは、基礎や土台、柱などが劣化している可能性が高いです。まずは耐震診断を行ったうえで、耐震補強をしましょう。シロアリ被害に合っていると、耐震性が低くなるのでチェックすることも大切。1981年5月31日以前に建てられた住宅は、旧耐震基準の構造となっているのでチェックしてください。
もともとの実家の老朽化の程度にも寄りますが、耐震性を向上させるために家全体の補強工事をする費用相場は、100~200万程と考えましょう。ただし、家の劣化具合や、補強内容によってよりお金がかかります。耐震診断から、どこまでの耐震リフォーム工事が必要なのか、問合せの際にリフォーム会社によく相談すればよい提案があるはずです。
水回り設備の更新に関するリフォームと費用
水回りとは、キッチン、浴室、トイレ、洗面所を指します。水回りの寿命は10~15年といわれており、古い家は水回りの故障や劣化が進んでいる可能性が高いです。実家を引き継ぐのであれば、水回り設備のリフォームを検討しましょう。洗面所のみなど単体でのリフォームも可能ですが、浴室と同時に行うとその分コストがかからないです。複数の部分の水回りリフォームを行うことも検討してみてください。
<水回りのリフォームの費用相場>
工事箇所 | 工事の内容 | 費用相場 |
キッチン | システムキッチン交換 | 50万円~100万円 |
キッチンの交換、移動 | 100万円~200万円 | |
浴室 | ユニットバスの交換 | 50万円~150万円 |
在来工法の浴室をユニットバスに変更、交換 | 65万円~150万円 | |
トイレ | トイレ本体の交換 | 15万円~60万円 |
和式から洋式への交換 | 15万円~60万円 | |
洗面所 | 洗面台本体の交換 | 10万円~25万円 |
洗面所の壁、床の張替を含めた工事 | 20万円~50万円 |
水回りのリフォームは、設備のグレードによっても費用に幅があります。
実家のリフォームに回すお金がない|どうする?
実家のリフォームは、費用の負担をできるだけおさえたいと考え、なかなか一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。ここからは、実家のリフォームにかかる費用を工夫する方法をご紹介します。
補助金やローンをうまく利用しながら、無理のないリフォーム計画を立てることが大切です。
各種リフォームに利用できる補助金を検討
古くなった実家のリフォームには、補助金が使えることがあり費用を少なく抑えることが可能。リフォームの内容や市町村によってももらえる補助金に違いがあります。補助金の申請は、工事の前に行う必要があるので、リフォーム会社にも計画段階で概要を話しておきましょう。補助金をもらえれば、費用の負担が軽減するので積極的に活用することをおすすめします。
リフォームに使えるローンを検討する
高額なリフォームをする場合は、リフォームローンを利用するのがおすすめ。適用条件を満たせば、住宅ローン控除を受けられ節税になる可能性があり、大きな費用負担軽減になります。
リフォームに使える補助金はどんなものがあるの?
リフォームに使える補助金は、工事内容によって違いがあります。どの補助金が利用できるのかの情報を念入りに調べて申請しましょう。補助金は、一般的に着工前の申請が必要です。受付期間中であっても、定められた予算の上限に達すると締め切られてしまうので、現在の最新状況の把握や申請時期も重要。また、せっかく補助金を申請できても、書類に不備があると審査は通りません。リフォーム会社にも相談しながら計画的に進めてください。
省エネリフォーム(断熱)
国や自治体に申請できる、省エネに関するリフォームの補助金があります。国が行う住宅省エネキャンペーン2023は、断熱リフォーム工事で対象となる補助金事業です。(住宅省エネキャンペーンホームページより) 注意点としては、事業における登録事業者で改修工事をする必要があります。
こどもエコすまい支援事業では、エネルギー価格高騰の営業を受けやすい子育て世帯、若者夫婦世帯による高い省エネ性能を有する住宅の省エネリフォームに対して支援されるもの。(こどもエコすまい支援事業ホームページより)外壁、屋根、床、天井いずれかひとつに該当する断熱性向上の工事を行う場合申請ができます。対象となる製品の基準、断熱材の区分が決まっていて、工事を行う場合の証明も必要です。
また、先進的窓リノベ事業は、既存の住宅における大きい窓の断熱性能を高めることで、冷暖房費負担の軽減やCO2削減、省エネルギー性能の確保への貢献を目的とした補助事業です。(先進的窓リノベ事業ホームページより)窓の断熱リフォームに対して申請できるものですが、対象要件があります。とくに、対象工事により補助額が変わるため入念にチェックしましょう。
この他にも自治体によっては、省エネリフォームへの補助金が利用できます。
耐震リフォーム
さまざまな自治体において、耐震リフォームや耐震診断について補助金事業をしています。工事契約の前に耐震診断を行うことが、支給条件になっている場合も多く、工事内容によって、補助の対象となるものや金額にも違いがあります。耐震性に問題のある木造住宅を限定とした補助事業も。詳細は、住んでいる地域の自治体に確認しましょう。
長期優良住宅化リフォーム
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置を講じられた住宅のこと。(国土交通省 長期優良住宅ホームページより) 長期優良住宅の普及の促進に関する法律によるもので、認定基準が細かく定められています。長期優良住宅推進事業では、建築および維持保全の計画を作成し、所轄行政庁に申請することで、補助を受けることが可能。
認定基準や工事内容の決まりが厳しいため、十分に検討した上で、申請するかどうかを考えましょう。
バリアフリーリフォーム
段差をなくすバリアフリーリフォームにおいても、補助金の申請ができます。こどもエコすまい支援事業でも条件によって申請は可能です。(こどもエコすまい支援事業ホームページより)
また、要介護、要支援認定を受けた家族が同居する場合には、「介護保険」によりバリアフリーリフォームの補助金をもらえる可能性があります。バリアフリーのリフォームは、独自に補助金の事業を行っている自治体もあるので、具体的にどのような申請ができるのかをチェックしてみましょう。
介護保険によるリフォームの補助金は、階段に手すりをつけることやドアを引き戸にする改修工事も含まれます。
実家をリフォームするには贈与税への理解が必須!?
古くなった実家のリフォームは、親世帯名義の住宅リフォームに子世帯がお金を出す場合、贈与税について注意しなければなりません。リフォーム代が110万円を超える場合には、贈与税が10~55%かかかり、金額の負担は大きいです。贈与税って何?と疑問に思っている方も多いでしょう。先ずは、贈与税の知識をつけ、対策を立てた上で、リフォームのプランニングをする必要があります。
贈与税の発生を避けてリフォームするにはどうしたらよいの?
実家のリフォームにおいて、贈与税の発生を避けるにはいくつかの方法があります。贈与税の発生を避けることや減税ができれば大幅に費用の負担は少なくなります。ここからは、贈与税の発生を避ける方法を内容ごとに詳しく説明していきます。円滑にリフォームするためにも必要な贈与に向けた手続きを行っておきましょう。
実家を子世帯が購入した上で名義変更
子どもが実家を購入し、親から子の名義に変更することで贈与税は発生しません。実際に子が親の家を買っているからです。土地は購入する必要がなく、家のみの購入でOK。築年数が経っている物件は、固定資産税の評価額も低くなっているはずなので、安く買いとることができます。
実家を子世帯が贈与してもらい名義を変更する
親世帯より子世帯が実家を贈与してもらったうえで、名義を子に変更する方法もあります。贈与してもらうとなると、贈与税が高額なイメージがありますが、そこまで高額にならないことが多いです。築年数が経った実家なら、固定資産税評価額も低くなっているはず。リフォームによる贈与税を避けるために検討してみるのもおすすめです。ただし、高額ではないものの、不動産所得税や登録免許税がかかるため注意しましょう。
実家の建物が高額な場合は相続時精算課税を使う
固定資産税の評価額が高い場合は、相続時精算課税を使う方法があります。相続時精算課税を利用すれば、2500万円までは非課税で財産分与できるというものです。建物の固定資産の評価額が、2500万円以下であれば贈与税はかかりませんが、親からの相続が発生すると相続財産に加えられ、相続税の支払い義務が発生します。後に、相続税を払う必要があることを理解しておきましょう。
実家リフォームの成功実例
空き家になっていた実家を継承して、快適に暮らせるためのリフォーム
転勤で単身赴任をしていたご主人が戻ってくるのを機に、使っていなかった実家をリフォーム。住んでいなかった実家は、家自体も古く、あちこちに痛みが生じていました。
台所以外の水回りは数年前にリフォーム済みのため、今回はリビング、キッチン、和室のリフォームを行います。間取の変更はありません。
新しい生活を快適に過ごせるように、窓は断熱樹脂サッシに。
室内はできるだけ木の雰囲気を出したいというご主人の要望に沿った写真のような木のぬくもりある仕上がりになりました。予算の中で、できるかぎりの要望を叶えたいという希望で、リフォーム会社と何度もプランニングの打ち合わせをしました。お客様にとって大変満足のいく、リフォームの仕上がりとなりました。
(長野市 ハートホームズ長野 施工事例より)
費用や贈与税をクリアしてあとはプランニングを楽しもう
実家を引き継ぐためのリフォームや費用についてご紹介しました。長年両親の住んだ家という大きな財産を売却したり、新しく建て替えたりするよりもそれを、活かしたリフォームを考えてみるのもおすすめです。
費用はできるだけ抑えたいものの、安いという理由だけでリフォーム業者を安易に決めてしまうのはもったいないです。先のライフスタイルに合わせ、より快適な空間にするために、自分たちと一緒に考えてくれる施工会社を選ぶことが重要。電話やメール、打ち合わせなども気持ちよく対応してくれるリフォーム会社を見つければ、スムーズに施工計画を立てられるはずです。
納得のいくリフォームを実現させるには、補助金や贈与税のポイントをおさえて、負担を大きくしない範囲で、自分の描くデザインなども含めたプランニングを楽しみましょう。子世帯がこれから住む家を理想の居住空間に改善するために、この記事を参考にしていただけるとうれしいです。